宮崎県東臼杵郡椎葉村に受け継がれる伝統農法「焼畑(やきはた)」♪ 山の斜面を焼いて作物を育て、数年で山へ返して森を再生させる循環型の農業です。世界農業遺産(高千穂郷・椎葉山地域)の公式サイトによると、現在も続けているのは全国でも椎葉村だけとされています。
この記事のポイント
- 山を焼いて約4年栽培し、長い休閑で森を再生する循環型農法
- 8月上旬に火入れ。ソバ→ヒエ・アワ→小豆→大豆の順に輪作
- 観光協会が「焼畑そば刈り体験」ツアーを案内している
見どころ・楽しみ方

焼畑の流れを、椎葉村観光協会と世界農業遺産の公式サイトの解説で追ってみましょう。
- やぼ切り:木を切り、茂った草や竹を整えます。焼畑のことを「コバ」、作ることを「コバキリ」「ヤボヒラキ」とも呼びます
- 火入れ(8月上旬):天気の良い乾燥した日を選び、山の神にお神酒を供えて唱え言を口にしてから、斜面の上のほうに火をつけます
- ソバの種まき:燃えた後、地面がまだくすぶるうちにソバの種をまきます。ソバは収穫までが短く、「75日目の晩飯に間に合う」といわれます
- 4年の輪作:1年目はソバ、2年目はヒエかアワ、3年目は小豆、4年目は大豆を育てます
- 長い休閑:栽培を終えた山は休ませ、森の回復を待ちます。休閑の年数は、観光協会は「20年ほど」、世界農業遺産のサイトは「約30年」と紹介しています
火入れの唱え言は、ヘビやカエル、虫たちに立ち退いてもらうよう呼びかけ、山の神や火の神に、火の余りや焼き残りがないよう守りを願う内容です(観光協会)。
- 無農薬で育つ理由:椎葉勝さんは、焼いた1〜2年目は焼けたにおいを嫌ってイノシシも虫も寄ってこないため、無農薬で作物ができると世界農業遺産のサイトで話しています
- 森を育てる焼畑:同じく椎葉さんの話では、もとは50種ほどだった植物が、焼いた跡には300種ほどに増えるそうです。クリ・サクラ・カエデ・ミズナラなど、動物のえさになる木も植えています
- 道具を見る:椎葉民俗芸能博物館では、焼畑用具(木下ろし用竿・稗ちぎり包丁)も展示されています(椎葉村の案内)。詳しくは椎葉村「椎葉民俗芸能博物館」
- 焼畑そばを味わう:観光協会の特産品ページでは、縄文時代から伝わる焼畑で育つ椎葉のそばは香りが強く、こしがあると紹介されています。椎葉産そば粉の手打ちそば定食は椎葉村「平家本陣」で案内されています
- お土産と読み物:焼畑農家が生産した食材の焼菓子や、焼畑の暮らしがわかる本『クニ子おばばと不思議の森』が、観光協会の特産品ページで紹介されています
- 体験ツアー:観光協会の「世界農業遺産 焼畑そば刈り体験」では、8月に火入れをした山で育ったそばを刈り、2日目に製粉とそば打ちを体験します。焼畑の継承者・椎葉勝氏に直接教わります
季節ごとの楽しみ方
- 8月上旬:火入れとソバの種まきの時期です。火入れの日は天候を見て決まります(観光協会)
- 秋:実ったソバを刈る体験ツアーが案内されています(観光協会)
- 冬(小正月):正月14日の前日に、柳の枝へ稗餅・粟餅や稗・粟を吊るす「メージョウ(餅花)」を作り、焼畑作物の豊作を祈ります(観光協会「年中行事」)
- 11〜12月:椎葉村「椎葉神楽」にも、狩猟や焼畑耕作の要素が色濃く伝わっています(観光協会)
火入れの場や畑は、生産者の作業場です。見学や体験は、観光協会が案内するツアーなどを利用すると安心です。
知っておきたい豆知識
- 江戸時代の記録:観光協会によると、1746年(延享3年)の「日向国臼杵郡椎葉山村々様子大概書」には、田2反歩余・畑49町6反歩に対し、焼畑耕作が492町2反歩余と記されています。耕地の大部分が焼畑でした
- 日本の焼畑のいま:焼畑は昭和25年頃まで各地で行われましたが、米作への転換や戦後の拡大造林で急速に衰え、現在続けられているのは全国でも椎葉村だけです(世界農業遺産の公式サイト)
- 世界農業遺産に認定:高千穂郷・椎葉山地域は2015年(平成27年)12月15日に認定され、2025年12月に10周年を迎えました。椎葉村では、縄文時代から伝わる伝統的な焼畑を日本で唯一伝承していることなどが評価されました
- 日本の焼畑の特徴:1回の火入れの面積が小さく、パッチ状に行うこと、3〜4年の輪作、長い休耕で森を回復させることが挙げられています(世界農業遺産の公式サイト)
- 復活した焼畑:夜狩内地区では2016年に夜狩内焼畑継承会が発足し、途絶えていた焼畑を復活させました。2016〜2019年に4回行われています(世界農業遺産の公式サイト)
- 灰が肥料:焼け跡の草木の灰を肥料にするため、灰のもとになる雑木や藪が欠かせません。杉・ヒノキの植林が進んだ今は、適した場所の確保が課題とされています(同上)
- 村の94%は森林:椎葉村は淡路島とほぼ同じ面積で、その94%が森林です(世界農業遺産の公式サイト)
よくある質問
焼畑は誰でも見学できますか?
焼畑は生産者の作業場で、火入れは天気を見て行われるため、日程は決まっていません。体験は観光協会のツアーが窓口です。日程・申込は椎葉村観光協会(0982-67-3139)へお問い合わせください。
なぜ「循環型」と呼ばれるのですか?
約4年作物を育てた後、長い休閑期間を置いて森を回復させ、次は別の場所で行うからです。休閑の年数は、資料により「20年ほど」「約30年」と紹介されています。
焼畑のそばは食べられますか?
観光協会の特産品ページでは、焼畑で育つ椎葉のそばは香りが強くこしがあると紹介されています。椎葉産そば粉の手打ちそば定食(1日20食限定)は、椎葉村「平家本陣」で案内されています。
こんな人におすすめ
- 縄文時代から続くといわれる農法の、いまの姿を知りたい方
- 世界農業遺産や山の暮らしに関心がある方
- そば刈りや火入れの文化にふれる体験をしてみたい方
基本情報
| 名称 | 椎葉村の伝統的焼畑(焼畑農法) |
|---|---|
| 主な実施地区 | 尾向地区(標高900m近い山)・夜狩内地区など(世界農業遺産の公式サイトで紹介) |
| 火入れの時期 | 8月上旬ごろ(天候による) |
| 輪作 | 1年目ソバ→2年目ヒエ・アワ→3年目小豆→4年目大豆 |
| 休閑 | 20年ほど〜約30年(資料により表記が異なります) |
| 認定 | 世界農業遺産「高千穂郷・椎葉山地域」(2015年12月15日) |
| 体験 | 観光協会「世界農業遺産 焼畑そば刈り体験」ツアー(日程は観光協会のお知らせで確認) |
| 問い合わせ | 椎葉村観光協会 0982-67-3139/椎葉村役場 地域振興課 0982-67-3203 |
※2026年10月時点の椎葉村観光協会「焼畑」・世界農業遺産公式サイト「椎葉 勝さん」・同「夜狩内焼畑継承会」・観光協会「椎葉の特産品」の記載をもとにしています。日程は変更される場合があります。
アクセス
- 車:椎葉村へは、宮崎市から約3時間、高千穂町から約1時間10分、延岡市から約1時間45分、熊本市から約2時間15分です(椎葉村観光協会)
- 窓口:椎葉村観光協会(観光案内所)は、椎葉村大字下福良1826番地108です
- 道路情報:山あいの村のため、通行止めや時間規制が出ることがあります。椎葉村役場の道路情報をご確認ください
地図
地図は、ツアーの相談窓口になる椎葉村観光協会(観光案内所)付近です。焼畑が行われる場所は年によって異なります。
椎葉村のおすすめスポット
- 椎葉村「椎葉民俗芸能博物館」♪国指定重要無形民俗文化財の椎葉神楽と焼畑の暮らしを伝える村営博物館【見どころ・アクセス】
- 椎葉村「柳田國男ゆかりの地」♪『後狩詞記』を生んだ日本民俗学発祥の地【見どころ・アクセス】
- 椎葉村「仙人の棚田」♪雲海に浮かぶ絶景・椎葉のマチュピチュと呼ばれる大いちょう展望台【見どころ・アクセス】
- 椎葉村「十根川集落」♪石垣と椎葉型民家が残る国指定重要伝統的建造物群保存地区【見どころ・アクセス】
まとめ
椎葉の焼畑は、火を入れ、ソバを育て、山を休ませて森を戻す、縄文時代から続くといわれる農法です。そば刈り体験などで、秘境の村の暮らしにふれてみてください♪


