宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町に伝わる「五ヶ瀬の荒踊(あらおどり)」。昭和62年1月8日に国の重要無形民俗文化財に指定され、令和4年11月30日にはユネスコ無形文化遺産「風流踊(ふりゅうおどり)」のひとつとして登録された、五ヶ瀬町が誇る伝統芸能です。
戦国時代の武者装束をまとった踊り手たちが、歌・笛・太鼓・鉦(かね)に合わせて舞う勇壮な風流踊。宮崎県で唯一、国の重要無形民俗文化財に指定された風流踊でもあります。奉納は毎年9月の最終日曜日♪
この記事のポイント
- 国の重要無形民俗文化財。令和4年にユネスコ無形文化遺産へ登録
- 宮崎県で唯一の国指定の風流踊。戦国の武者装束で舞う
- 奉納は毎年9月の最終日曜日、三ヶ所神社で

戦国の武者が始めた踊り。坂本城主・坂本伊賀守正行の出陣に由来
五ヶ瀬の荒踊は、坂本城(三ヶ所川上流)の城主であった坂本伊賀守正行(さかもといがのかみまさゆき)が天正年間(1573〜92年)、戦に出陣する際の士気を高めるために始めたとされています。まさに戦国の世に生まれた踊りです。
その後、慶長年間(1596〜1615年)に孫の坂本山城守入道休覚(さかもとやましろのかみにゅうどうきゅうかく)が、守護神である二上大明神(現在の三ヶ所神社)に奉納する令を定めたと伝えられます。
その際、「新発意(しんぼち)」という寺の後継者に葬式を執らせ、寺で飼われていた猿も一緒に踊りに出させた、という伝承も残されています。
一説には近江国(現在の滋賀県)坂本から伝来した踊りともいわれており、はるか遠い土地との縁を想像させます。
400年以上前に始まった踊りが、途切れることなく今も同じ土地で舞われている——その事実そのものが、この土地の底力を物語っています。

ユネスコ無形文化遺産「風流踊」に登録。宮崎県では唯一の指定
「風流踊」とは、華やかな・人目を惹く、という「風流」の精神を体現し、衣裳や持ち物に趣向をこらして、歌や笛、太鼓、鉦(かね)などに合わせて踊る民俗芸能のこと。
除災や死者供養、豊作祈願、雨乞いなど、安寧な暮らしを願う人々の祈りが込められ、祭礼や年中行事の機会に地域の人々が世代を超えて参加してきました。
この風流踊は全国41件が国の重要無形民俗文化財となっており、宮崎県では唯一「五ヶ瀬の荒踊」が指定されています。ユネスコ無形文化遺産への登録までの流れは次のとおりです。
- 令和3年(2021年)2月:全国41の「風流踊」がユネスコ無形文化遺産への提案候補に選定
- 同年3月:提案書を提出
- 令和4年11月30日:登録
県内でただひとつ、世界に認められた風流踊が五ヶ瀬町にあるのです。
奉納は毎年9月の最終日曜日。三ヶ所神社へ
荒踊の日程は毎年9月の最終日曜日。奉納先は、天孫降臨伝説の古社として知られる三ヶ所神社(かつての二上大明神)です。
戦国時代の武者装束に身を包んだ踊り手たちが隊列を組んで踊り場に練り込み、歌と笛・太鼓・鉦の音に合わせて舞う姿は、勇壮のひとことに尽きます。
五ヶ瀬町にはこのほかにも鞍岡祇園神楽など多彩な民俗芸能が受け継がれています。荒踊はそのなかでも、国とユネスコの両方から価値を認められた特別な存在です。
年に一度、その日その場所でしか出会えないのが、この踊りの何よりの贅沢。開催日時・時間・見学方法は年によって異なる場合がありますので、事前にごかせ観光協会へご確認ください。

基本情報
| 名称 | 五ヶ瀬の荒踊(ごかせのあらおどり) |
|---|---|
| 種別 | 風流踊(民俗芸能) |
| 国指定 | 昭和62年1月8日 国指定重要無形民俗文化財 |
| 県指定 | 昭和37年5月15日 宮崎県指定 |
| ユネスコ | 令和4年11月30日 ユネスコ無形文化遺産「風流踊」として登録 |
| 日程 | 毎年9月の最終日曜日 |
| 奉納先 | 三ヶ所神社(宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町大字三ヶ所8736) |
| 起源 | 天正年間(1573〜92年)、坂本城主・坂本伊賀守正行が出陣の士気を高めるために始めたと伝わる |
| お問い合わせ | ごかせ観光協会 0982-82-1200 |
※開催日時・見学方法は年により異なる場合があります。最新情報は五ヶ瀬町公式サイト(ごかせ観光協会)等でご確認ください。
アクセス
- 奉納先(三ヶ所神社)住所:宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町大字三ヶ所8736
- 五ヶ瀬町役場から車で約8分。
- JR延岡駅から車で約1時間15分。
- 九州中央自動車道「日之影深角IC」から車で約30分。
- 公共交通機関でのアクセスは限られるため、お車での来訪をおすすめします。当日は混雑が予想されるため、時間に余裕を持ってお越しください。
地図
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開催時期や見頃の目安は、年中行事・イベントカレンダーでも確認できます。
見どころ・楽しみ方
文化庁が運営する「文化遺産オンライン」の解説によると、荒踊の一行は、六十余名の武者姿の者を中心とした役の者が隊列を組んで踊り場へ練り込みます。
隊列は、先払いを先頭に、踊り太夫、鷹匠、槍、長刀、弓、鉄砲、新発意(しんぼち)、猿などの各役が続き、そのうしろに太鼓・小太鼓・鐘・笛・法螺貝の楽器の役が並びます。
- 踊る曲は十余曲。物語調の歌や念仏歌にあわせた踊りが次々と披露されます
- 各曲に30〜40分ほどかかり、全体では6時間ほどの長丁場になります
- 踊り場の中央には、コの字型に張った幔幕を置き、その中に太鼓の打ち手や歌い手が入ります。踊り手はその周りを取り囲むようにして踊ります
知っておきたい豆知識
文化遺産オンラインの解説によると、荒踊は次のように受け継がれています。
- 大字三ヶ所の坂本区の約250戸の人々が伝承。踊りの役は、どの組の者が担当するかが明確に分けられている
- 踊り太夫などいくつかの役は世襲。行列や旗の行進順序には、昔ながらの定めが今も厳守されている
- 保護団体は荒踊保存会
同解説は、荒踊を、規模や構成が大がかりなだけでなく、他に類例のない芸態を持つ地域色の濃い風流踊だと評価しています。
宮崎県が公開する県内の国県指定文化財の一覧には、国指定の重要無形民俗文化財として次の6件が載っています。
- 米良神楽(昭和52年)
- 高千穂の夜神楽(昭和53年)
- 五ヶ瀬の荒踊(昭和62年1月8日)
- 椎葉神楽(平成3年)
- 山之口町の文弥人形(平成7年)
- 高原の神舞(平成22年)
荒踊は、指定が古い順では3番目にあたります。
農林水産省のサイトで公開されている世界農業遺産保全計画(第3期)には、高千穂郷・椎葉山地域の伝統文化の一つとして荒踊が挙げられ、五ヶ瀬町の荒踊の写真も掲載されています。
同計画は、神楽・臼太鼓・荒踊・歌舞伎・民謡などの活動団体の数を、令和5年時点で130団体としています。
よくある質問
荒踊は何人くらいで踊るのですか?
文化遺産オンラインの解説では、六十余名の武者姿の者を中心とした役の者が隊列を組むとされています。隊列の順番は、上の「見どころ・楽しみ方」の節をご覧ください。
見学にはどのくらい時間を見ておけばよいですか?
文化遺産オンラインの解説によると、全体で6時間ほどかかる長丁場です。曲ごとの時間は上の「見どころ・楽しみ方」の節をご覧ください。時間に余裕を持ってお出かけください。
荒踊を受け継いでいるのはどなたですか?
文化遺産オンラインの解説によると、大字三ヶ所の坂本区の人々によって伝承されていて、保護団体は荒踊保存会です。役の分担は、上の「知っておきたい豆知識」の節をご覧ください。
こんな人におすすめ
- 国指定・ユネスコ無形文化遺産の伝統芸能を見てみたい方
- 9月最終日曜という年に一度の奉納日にスケジュールを合わせられる方
- 戦国武将ゆかりの郷土芸能に関心がある方
- 三ヶ所神社など周辺の神社めぐりもあわせて楽しみたい方
まとめ
五ヶ瀬の荒踊は、天正年間に坂本城主が出陣の士気を高めるために始めたと伝わり、400年以上にわたって受け継がれてきた風流踊。昭和62年に国の重要無形民俗文化財に指定され、令和4年にはユネスコ無形文化遺産にも登録された、宮崎県で唯一の存在です。
奉納は毎年9月の最終日曜日、三ヶ所神社にて。戦国の武者装束が舞う一日は、五ヶ瀬町の歴史そのものに立ち会う時間です。年に一度きりの機会、ぜひスケジュールを合わせて訪れてみてくださいね♪


